映画に感化されて時計を買ってしまいました

SUUNTO 9 PEAK PRO本体とパッケージを並べた俯瞰写真

「プロダクト・プレイスメント」というマーケティング手法があります。映画やドラマなどの作品中に実在の商品を登場させることで、メーカーなどが宣伝効果を期待するものです。古くは50年代から使われている手法だそうで、最近では新海誠監督のアニメ映画「天気の子」の劇中で、登場人物が歩き回る東京の街中で実在のブランドがあちこちに登場していることが話題になり、特に主人公たちがローソンの商品を美味しそうに食べるシーンは(実はちょっと侘しいシーンでもあるのですが)とても印象的でした。

「天気の子」のように企業がスポンサーとなっている場合と、具体的な商品が出ているけれどスポンサーにはなっていない場合がありますが、どちらが宣伝効果があるのかはケースバイケースのようです。逆に、劇中に登場させるにはメーカー側の許可が必要であったり、権利関係が厳しくなった昨今では作品の内容によって許可が降りなかったり、いろんなパターンがあるので、わたしたちが何気なく作品を鑑賞していても、それがスポンサーなのかどうかは、エンドロールに協賛企業として名前が出てこない限り、なかなかわかりません。

最近は、韓国ドラマでプロダクト・プレイスメントが積極的に用いられているそうです。韓国では「CMは30分につき1分」という放送上の制限があるんだそうで、このおかげで番組自体を広告枠に使えるプロダクト・プレイスメントが伸びているという事情もあるようですが、グローバルにヒットすることが見込める韓国のコンテンツは、グローバル企業にとっても最適な宣伝ツールになっているようで、アメリカのサンドイッチチェーン「サブウェイ」は、韓国ドラマでプロダクト・プレイスメントを行ったことで、韓国ドラマ人気の高いインドネシアへの出店が決まったそうです(元々サブウェイはジャカルタに店舗を出していたそうですが、20年前に撤退していたとのこと)。

わたしはドラマはあまり見ないのですが、映画は週に一回ほどのペースで観ています。とは言え、「AIR」を見たからと言ってエア・ジョーダンを買いたくなることもなく、作中でブランド商品が登場することでどれほどの宣伝効果があるのか、懐疑的でした。

しかし、先日思わず映画に感化されて買ってしまったものがあります。それは、腕時計です。

アントワーン・フークア監督作品「イコライザー THE FINAL」は、デンゼル・ワシントン演じる元アメリカ国防情報局員ロバート・マッコールが、相手を「秒殺」する凄腕で悪人どもをやっつける「イコライザー」シリーズの最新作。劇中では彼の「秒殺」の腕前がシリーズ中の見せ場になっているのですが、その時に彼が「9 seconds.」と、相手を倒すまでの秒数を宣言し、腕時計のタイマーをカチッ、と押すのです。その時計がSuuntoというスポーツウォッチブランドの商品で、過去の作品が上映された時には、ロバート・マッコールのカッコよさに魅了されたファンが、劇中で着けていた「SUUNTO CORE」という商品を購入する人が続出しました。

今年10月に公開された最新作では、マッコールさんは機種変していたのです。その新しい時計「SUUNTO 9 PEAK PRO」が、シンプルなデザインのスマートウォッチで、わたしは普段一切腕時計を身につけない、むしろ苦手なはずなのに、映画鑑賞中にこの時計にすっかり魅了されていまい、どうしても欲しくなり、数週間悩んだ挙句、とうとう購入してしまいました。

SUUNTOがプロダクト・プレイスメントかどうか、わたしはよく知らないのですが、「商品が売れるには、共感やストーリーが大事」という、昨今のマーケティングの常套句について、共感やストーリーが大事なのは、購入者にとっても、共感やストーリーによって充実度や幸福度が高くなるからなのだ、と実感した今回の買い物でした。