「新品」よりも「中古品」? 今後の再販ビジネスの肝になるのは「NFT」かも

アパレルショップの店内写真

最近、街中に、中古品の販売や買い取りをしているお店が増えた気がします。

昔から、古本や古着、ブランド品の売買を行う古物商は少なくなかったのですが、店舗数が多くなり、ショッピングモールのような賑わった施設の目立つところにオシャレな店舗を構えているケースが増えています。特に流行のサイクルの早い古着は、新品を販売するアパレルの店舗の横に並んで出店されることも珍しくありません。

背景には、メルカリに代表されるような、使わなくなった使用済みの商品を気軽に取引できるサービスの台頭があるのでしょう。同じものでも安く手に入るのであれば中古でも良い。今や新品では手に入らないから中古品を探す。地球環境のことを考えると、新品を買うよりも中古品を買うほうが負荷が少ないので、中古品を選ぶ、など、既に誰かが使ったものを購入することに対する心理的なハードルが下がり、使わなくなったものを捨てるのではなく誰かに買ってもらうことが、もはや当たり前になりました。新品を見る目も、買うときの値段だけでなく、中古品として売った場合の買取価格まで意識して購入するケースまで増えているようです。

わたしも、スマホは数年前から中古品を使っています。スマホの新製品は年々高額になっていますが、それに反比例するように、スマホに求めることは年々少なくなっていました。スマホゲームをやる方や写真や動画をスマホで頻繁に撮られる方は今も最新モデルが魅力的に映るのかもしれませんが、ゲームをせず、写真も動画もあまり撮らないわたしにとっては、数年前の型落ちモデルがちょうど良いのです。そうなると、正規には販売されていない旧モデルを、中古品で購入することになります。中古品なので、少し傷がついていたりバッテリーの消費が少し早かったりするのですが、元々そんなに神経質になってスマホを扱うタイプではないし、どのみちじきに劣化するのは避けられないので、あまり気にもなりません。キャリア縛りの理由になっていたSIMロックが解除可能になって以降、スマホの中古販売も一般的になったので、選択肢も非常に多くなりました。

このように、自分に必要なものが、価格的にも機能的にも中古品の方が手に入りやすい今の時代、新品は、新品であるというだけでは価値が生まれづらくなっています。

近年話題になっているNFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)は、デジタルデータを、世界で一つのものとしてブロックチェーンと呼ばれるデータベースに紐付けすることで、無限に複製されることを防ぐとともに、再販売する際に、オリジナルの作者に収入が発生させることもできることが特徴です。例えば古着でも古本でも、中古販売で流通していても、元の作り手には一銭も入りません。中古品が新品以上に高額になることがありますが、その際に元の作り手にも利益が生まれるようにできることから、NFTはデジタルアーティストの作品において活用が進んだ側面があるのです。

現実の商品においても、再販売する際の取引額の一部が元のメーカーなどに還元される機能や制度が、早晩必要になってくるでしょう。なぜなら、メーカーが新商品を出し続けるのは、大ざっぱに言えば「新商品を出し続けなければ潰れてしまう」からで、もし「新商品を出し続けなくても潰れない」、つまり、一度商品を販売すれば、そのあとは必要な数がユーザー間で取引されるだけでメーカーの収入につながるのだとすれば、必要以上に生産したり、無理に新機能を追加して苦し紛れの新商品を売り出す必要はなくなるからです。

既に実物の製品にNFCなどのチップを埋め込むことでNFTと紐づける事例は生まれています。あとは、これがどこまで一般化するか、ということにかかっているでしょう。まだまだ普及や理解が進んでいないNFTですが、案外、こんなユースケースから一気に一般化するんじゃないかな、と思ったりします。