制作会社にコンペを依頼するなら、提案依頼書を作って、より高い成果を!

「START」と書かれた石畳の上に靴が並ぶ写真

あなたの会社が、販促用のウェブサイトや動画、POPやチラシといった印刷物などを作りたい、と思った時、もし社内で制作する部署やスタッフがいない場合は、外部業者に発注することになるかと思います。その際に、すでに信頼できる制作会社があればそちらに相談すれば済みますが、特定の会社がない、または会社のルールとして一社に限定して依頼してはいけない場合には、「コンペティション(コンペ)」を行うことになるでしょう。

制作費用であれば、複数社に伺えば、金額の妥当性もある程度把握できますし、デザインのクオリティであれば、いろんな方向からの提案を比較して、最も自分たちの求めているものを選ぶことができますので、コンペは非常に合理的な手段と言えます。

しかし、コンペを行えば必ず最適な結果が得られるかと言えば、実はそうとも限りません。

制作費であれば、金額だけで比較してしまうと「安かろう悪かろう」のリスクがありますし、デザインのクオリティも、複数案あったとしても、「どれもイマイチ」となってしまう可能性もあります。結局、信頼できる制作会社があればその会社にお願いしたほうが、仕上がりに対する安心感もありますし、あなたの会社のことを理解してくれている分、ご要望をすくい上げる能力の高さは、初対面の制作会社とは比較にならないでしょう。

とは言え、信頼できる会社を見つけるためにも、コンペは役に立ちますし、わたしたちデザイン会社にとっても、コンペは新たなクライアントとのつながりを生み出すことのできる大きなチャンスです。

ですから、「安かろう悪かろう」「どれもイマイチ」にならない実効性の高いコンペを行うことが肝要です。

では、「実効性の高いコンペ」を行うための条件はなんでしょうか。それは、「提案依頼書をしっかり作ること」です。提案依頼書の内容が抜け漏れなくしっかりとまとまっていれば、制作会社は高いクオリティの提案に向けて邁進することができます。つまり、制作会社のポテンシャルを最大限に活かすことができるのです。

さて、「実効性の高いコンペ」を実行するために必要な提案依頼書とは、どのような依頼書でしょうか。業界・業種・依頼内容によって違いもありますが、以下に、提案依頼書に必要な項目について、まとめてみました。

⚫︎制作依頼の趣旨
提案を依頼するに至った経緯や目的・現状の課題などは、なるべく事細かに伝えておいた方が、制作側の理解が深まり、提案の質は高まります。「客観的な視点から提案してほしいので、あえて詳しい説明は省きたい」とおっしゃる方がたまにいらっしゃいますが、どんなに詳しい説明を受けても、社外にいる時点で「客観的」ですから、社外秘でない限り「社内でも他部署の人は知らない」情報を伝えるぐらいに思っておいた方が良いと思います。

⚫︎関連情報
制作物に関連する情報(例えば、競合他社のリスト、市場調査のデータ、参考商品やサイトなど)は、できるだけ共有しておくことで、提案の内容が的外れになるリスクを下げることができます。

⚫︎制作物の仕様
印刷物であればサイズ・枚数・紙の種類(決まっているなら)など、映像ならデータ形式やサイズ・秒数など。ウェブサイトであれば、全体のページ構成や契約サーバの環境、更新の有無や必要な機能(編集・投稿機能、検索機能、EC機能、アクセス解析機能、公開後のサポートなどなど)、など、事前に決めておくべきことが多岐に渡りますのでご注意ください。

⚫︎提案における必須条件・要望
見積りであれば具体的な項目(すでに大まかな予算が決まっているならその額も)、デザインであればロゴマークなどデザイン上のルール、必要な提案のバリエーション数、デザインの完成度(完成形に近い形が必要かラフ程度で良いか)など、あなたの会社が理解しやすく、検討しやすい条件を決めてください。ただし、提出期限まで時間がないのに要望ばかりが多いと、全体のクオリティが下がってしまったり、制作会社側が「この条件ではご提案ができない」とコンペを降りてしまう可能性もありますので、ご注意ください。

⚫︎質問の受付方法と回答日
受付方法は、メール本文で記載する形でも良いですが、多くの制作会社に声をかけていて、質問も多く来ると予想できるなら、解答欄のついた質問書のテンプレートを作り、そちらに記載したものを提出するようにした方が効率的な場合もあります。
回答はコンペ参加企業全てと共有することで、全社が同条件でご提案できますので、「それを知っていればもっといい提案ができたのに……」という機会損失を、制作会社もあなたの会社も起こさずに済みます。

⚫︎提出物の内容
提案書の体裁(大きさやページ数など)を決めておいたほうが、比較検討しやすい場合があります。もし、「制作会社の名前を伏せて、客観的に比較できるようにしたい」時は、あらかじめ提案書のフォーマットを決めておき、制作会社名やロゴなどを入れないように指示しておいたほうが良いかもしれません。

⚫︎コンペのスケジュール
提出期限、プレゼンの日時、結果発表のタイミングを記しておきましょう。

⚫︎制作物のスケジュール
いつまでに必要か、店頭ポスターなどであれば掲出期間、期間限定のウェブサイトであれば運用期間なども、ご提案内容を左右する要因になりますので、事前に決めておきましょう。

以上の内容が押さえられていれば、制作会社がご提案のクオリティを上げるために使うべき時間を、余分なことに使ってしまい、肝心のご提案の詰めが甘くなってしまうリスクは大幅に軽減できるでしょう。

提案依頼書の配布は、合同説明会を開いて各社同時に行い、説明の後、その場で質疑応答を行う(後日質問も受け付ける)のが理想ですが、各社個別の配布・説明でも大丈夫です。ただその場合は、制作期間に差が出ると不公平になりますので、会社ごとにあまり日にちを空けず、できるだけ各社のスタート地点が揃うようにしてください。

「仕事を依頼する側が、こんなにめんどくさいことしなきゃいけないの?」と思われるかもしれませんが、コンペを実効性のあるものにするためには、どうしても必要な作業になりますし、これは、あなたの会社の人間でなければ作れない資料でもあります。ただし、心やすい制作会社がいらっしゃるなら、コンペであっても相談に乗ってくれるとは思いますので、悩まれた時には意見を伺ってみるのも良いでしょう(わたしたちも過去にお客さまから質問を受けたことが何度かあります)。

ぜひ、適切な提案依頼書を作って、あなたのコンペを成功させてください。コンペへのお誘いも、お待ちしております。