大人にこそ観てほしい、劇場版「名探偵コナン」のすごさ

江戸川コナンのフィギュア

日本のゴールデンウィークの定番映画といえば、やっぱり「名探偵コナン」。というわけで、劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』を観てきました。

1994年から続く人気コミック「名探偵コナン」の劇場版作品は、テレビアニメがスタートした1996年の翌年から、毎年4月に公開がスタートしています(2020年のみ、コロナの影響で1年延期されました)。わたしが観始めたのは、2018年上映の「ゼロの執行人」から。当時小学3年生だった娘にねだられたことがきっかけでした。それまでは「どうせ小学生向けのアニメでしょ」と高を括っていたのですが、観てびっくり。「こんなにハイクオリティな作品だったのか」と感動し、今やこの時期になるとわたしの方から娘を誘って観に行くようになっています。

まず何に驚いたかと言うと、ストーリーの骨太さ。同作品は、毎回殺人事件と大きな事故が発生し、それを主人公の江戸川コナンが名推理で解決していくのですが、「ゼロの執行人」で犯人が仕掛けた犯罪は「IoTテロ」。ネットワークをハッキングして家庭内の電子機器を誤動作させて爆発を起こすというものでした。子供向けだからといって、目線を下げた甘っちょろい話で誤魔化していません。そして、気を抜くと追いつけなくなるほど入り組んだストーリー展開は、大人でも十分に見応えがあります。

そして絵作りも実に見事。被写界深度を感じさせる背景のボケ足の付け方、手振れを含むカメラワークは、まるで実写映画。カーチェイスや大爆破シーンも毎度お馴染みですが、その迫力たるや、一流のハリウッド映画とも渡り合えそうなほどです。そしてよく見ていると、セリフを喋っている人の周囲にいる人たちも、ただじっと立っているのではなく、ちゃんと芝居をしているのです。

ここまで本気で作っていながら、ちゃんと初心者でも子供でも観られるように作っているところもお見事。劇中には、楽しいクイズのコーナーやギャグも満載で、シリアスなストーリーとのバランスが絶妙です。今回の「黒鉄の魚影」では、IT技術におけるプライバシーやセキュリティ、ファクトチェックといった現代的なテーマを取り上げていますが、ある登場人物が「これはディープフェイクだ」と発言すると、その後に別の人物が「つまりニセ画像のことよ」と補足する、という、子供にもわかるようなフォローが入っているところが素晴らしいです。それでいて、過剰に説明台詞が多いわけではなく、要所要所でちゃんと「演技」で語るような大人な演出もあるところがまたニクい。

そして、アバンタイトルの後のオープニングは毎回「俺の名前は工藤新一……」ではじまるあらすじから始まり、名探偵コナンを初めて観る子供も、子供の付き添いできただけの親も、どういう話なのかがちゃんと把握できる親切設計。隅々まで配慮された、「誰一人取り残さない」映画、それが劇場版「名探偵コナン」なのです。

今回の「黒鉄の魚影」も、スリル、サスペンス、格闘、カーチェイス、爆発、友情、ロマンス、コメディ……と、映画に求められる魅力がたっぷり詰まっています。わたしも終始手に汗握ったり涙ぐんだり大変でした。こんなクオリティの映画が毎年観られるなんて、日本人は本当に幸せです。

劇場は子供や若者でいっぱいですが、大人にこそ観て欲しいと思います。ゴールデンウィークは、劇場版「名探偵コナン」がおすすめです。