「ほんとうのさいわい」とは?

夕暮れの海辺に女性が両手を広げている写真

日本人は幸福度が低い、という話はよく耳にします。世界幸福度報告書によると、日本は137カ国の中で47位。主要7カ国(G7)では最下位だそうです。それでも前年より上昇してはいるようです。

一方で、フェリシモが行ったアンケート調査では、「あなたは今、しあわせですか?」との質問の回答は、「まあまあしあわせ」「かなりしあわせ」と答える人を合わせると約7割。「しあわせ」だと感じいている人が少ない、という印象はあまりありません。

株式会社ヒューネルによる調査では、同じ質問に対して「幸せ」「とても幸せ」と答えた数は男性36%、女性49%と半数を切ってしまっています。

世界幸福度報告書の指標は0〜10の11段階の数値で採点する形で測定しますが、日本人は「普通」「どちらでもない」と感じる時の「中央値」をそもそも低めに設定しがち、という調査結果もあります。順位付けは「1人あたりGDP、社会的支援、健康寿命、人生の選択の自由度、寛容さ、腐敗の少なさ」という6つの項目を各国ごとに検討した上で行っているそうですので、より客観的なデータになるように調整されているようですが。

そもそも、幸せと感じるかどうかは個人の主観ですので、そもそも正確な測定が難しいものであることは確かです。「あなたは今、しあわせですか?」と聞かれたら、あなたはどう思いますか?その瞬間はぼんやりと「あー、しあわせかなあ」と思っても、それを改めてじっくりと考えてみると、「いやちょっと待て、あんなこともあるしこんなことも……やっぱりそんなに幸せじゃないかも」と結論が変わったりしませんか?最初は不幸だと思ったけど、考えてみたらそうでもない、ということもあると思います。

そんなことを考えていて、ふと宮沢賢治著「銀河鉄道の夜」を思い出しました。物語の後半、主人公のジョバンニが「ほんとうにみんなのさいわいのためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない」「けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう」と語るくだりがあります。親友のカムパネルラは「僕わからない」と答えますが、そのカムパネルラは実は既に亡くなっていました。川で溺れていた友人を助けたことで、自分が流されてしまったのです。

本作は晩年まで推敲が繰り返され、完成しないまま「第4次稿」で絶筆しています。その第4次稿ではカットされているブルカニロ博士という登場人物にこのようなセリフがあります。

“おまえがあうどんなひとでも、みんな何べんもおまえといっしょに苹果をたべたり汽車に乗ったりしたのだ。だからやっぱりおまえはさっき考えたように、あらゆるひとのいちばんの幸福をさがし、みんなといっしょに早くそこに行くがいい、そこでばかりおまえはほんとうにカムパネルラといつまでもいっしょに行けるのだ"

“さあ、切符をしっかり持っておいで。お前はもう夢の鉄道の中でなしにほんとうの世界の火やはげしい波の中を大股にまっすぐに歩いて行かなければいけない。天の川のなかでたった一つの、ほんとうのその切符を決しておまえはなくしてはいけない"

さて、あなたは今、しあわせですか?