「“いい音”を聴こう!ピュアオーディオ視聴会」<夏休み自由研究編・オーディオの仕組みを知ろう!>

さて、世間は壮絶な暑さの中、夏休みに突入しております。
この視聴会のイベントも、来月には夏休み企画として、ちょっと趣向を変えたものにしようと思っておりますが、その前の予習という意味も含め、これまでの視聴会レポートであまり触れられなかった「オーディオ機器の仕組み」について、ちょっと書いてみようと思います。良い子のみんなは、夏休みの自由研究の課題として取り上げるといいと思うよ!

というわけで、まずは、毎回視聴会で僕が説明する際に使っているオーディオ機器の構成図をご覧ください(クリックするとPDFが開きます)。

今回はこれを見ながら読んでもらえれば、より分かりやすくなると思います。

上からスピーカー、パワーアンプ、コントロールアンプ、イコライザアンプ……と色々連なっていますが、多分これだけでは分かる人にしか分からないと思いますので、とりあえず、何かCDをかけてみましょう。前回三浦社長に好評だったキセルの「凪」がいいですね。

では、図の右下にある「CDプレーヤー」に挿入しましょう。

このCDプレーヤーは何をしているのかと言いますと、CDの盤面から音の情報をピックアップで拾うという、恐らく皆さんご存知の通りのことをしています。
基本的には、ただそれだけです。曲の選択、早送り/早戻しなどは出来ても、それ以外には何もできません。
ポータブルCDプレーヤーなどが当たり前のこのご時世では考えられないかも知れませんが、ボリューム調整もトーンコントロールもできません。勿論、イヤホンジャックもありません。

じゃあボリューム調整やトーンコントロールは?
そこで、「コントロールアンプ」の出番になります。
コントロールアンプは、プレーヤーから流れてきた信号をその名の通り「コントロール」します。音質の調整や、ボリュームの上げ下げは、このコントロールアンプの役割です。

でも、これだけではスピーカーから音は出ません。
何故なら、CDプレーヤーからの出力は小さく、コントロールアンプは「コントロールするため」にそれを少し増幅しますが、スピーカーを鳴らすまでには至りません。

そのために必要なのが、「パワーアンプ」です。
パワーアンプは、コントロールアンプで調整された信号をスピーカーが鳴るように増幅させるための機器です。

はい、やっと音が鳴りました。♪

「なんでこんなに手間がかかるの? ポータブルCDプレーヤーやパソコン用のスピーカー、iPodはどうしてあれだけで音楽が聴けるの?」
と思われる方もいらっしゃるでしょう。
簡単な話です。

それは、
「ポータブルCDプレーヤーやパソコン用のスピーカー、iPodは、以上のようなオーディオシステムを、ものすごく小さくまとめて内蔵してるから」
です。

例えばパソコン用のスピーカーの多くは、片方に電源とボリュームが付いていますが、あれが「パワーアンプとコントロールアンプ」を小型化したものです。
ポータブルCDプレーヤーやiPodのイヤホンジャック部分にも小さなデジタルアンプが内蔵されています。iPodのアンプは小型/軽量化・コストダウンのために安価なものが使われているので、USBのコネクタからの音を外部アンプを通して聴いた方が音が良い、というのは一部では有名な話ですね。
安いパソコン用のスピーカーだと電源無しで鳴るものがありますが、あれはイヤホンジャックからの「イヤホン用に増幅した」レベルの音がそのまま鳴っているということになります。使ったことのある方は分かると思いますが、大きい音は出ないですよね?

というわけで、アンプ(正式には“アンプリファイア”)は、音楽をオーディオで聴くためには、なくてはならない存在なのです。

ではここで、CDを止めてアナログレコードをかけてみますね。視聴会ではお馴染みのハンプトン「STAR DUST」にしましょうか。

構成図の左下を見てください。
まず「ターンテーブル」ですが、視聴会では「ベルトドライブ」というタイプのものを使っています。
いわゆるDJが使っているターンテーブルは「ダイレクトドライブ」と言って、ターンテーブルの中心にモーターが内蔵されていて、ターンテーブルを「ダイレクトに」回転させています。
「ベルトドライブ」の場合は、モーターはターンテーブルの外に独立していて、モーターは、両者を繋ぐベルトを介してターンテーブルを回転させます。それによって、モーターの振動が干渉しないようにしているんです。
このZET-3というターンテーブルの写真を見てもらえばよく分かると思いますが、ターンテーブルの左側に立つ円柱状のものがモーターで、ターンテーブルと繋がっている輪っかがモーターの回転を伝えています。当然、グランドマスター・フラッシュの真似もできませんし、ターンテーブリストには使い物になりません(笑)。
ちなみにその左にある四角い箱が電源です。音に干渉しそうなものは全て外部に出しているというわけです。

ちなみに「アイドラードライブ」という、ダイレクトドライブとベルトドライブの中間のようなターンテーブルもあるんですが、今は生産されていないと思いますので、詳しくは触れずにおきます。僕も実物は見たことがありません(笑)。

さて、では針を落としましょう。
針の付いた「カートリッジ」と呼ばれる部分(ZET-3で言うところの、トーンアームの先に付いた“金色”のパーツ)で、針が拾った振幅が電気信号に変換されています。つまり、音を左右するすごく大切なところ。そのためもあってか、この小さな部品だけで百万円、という高級品もあるほどです。

先ほどの構成図では、ターンテーブルから「ヘッドアンプ(昇圧トランス)」というものに繋がっています。これは、カートリッジの種類によっては必要になる機器です。
カートリッジには大きく分けて「MC(ムービングコイル)型」「MM(ムービングマグネット)型」の二種類があります。おおざっぱに言うと、「MM型はパワフル、MC型は繊細」というように言われますが、MC型の場合は出力が小さいので、最低限の電圧まで増幅させる機器が必要になります。それがヘッドアンプ、または昇圧トランスと呼ばれるものです。
視聴会で使っているのはMC型カートリッジと昇圧トランス(ATH-2A)です。

はい、そんなわけでMC型カートリッジがハンプトンの盤面から音を拾いました。
トーンアームを伝って、昇圧トランスを通過した信号は、「イコライザアンプ」が受けます。

ここで登場するイコライザアンプというアンプ、一体何をするものでしょうか?
実はアナログレコードは、盤に刻まれる(カッティングされる)際に「高音域のレベルを大きく、低音域のレベルを小さく」しています。
アナログレコードの場合、マスターテープに録音されたままの音の情報をそのまま刻み込むと、高音域の音圧が足りず、ホコリなどのノイズに埋もれてしまいやすくなってしまい、逆に低音域は音圧が高過ぎるために、針の振幅が大きくなり過ぎるという特性があります(再生時に針がついて来れなくなってしまったり、溝の幅が大きくなるために、物理的に収録時間が短くなってしまうなどの問題が起こります)。
でも、このまま再生してしまうと、高音がうるさく、低音が物足りないものになってしまいます。
つまり、この波形を再生時に「本来の録音されている音に戻す」のが、イコライザ(Equalizer=“均一にする”という意味)アンプの役割なのです。

この「高音域のレベルを大きく、低音域のレベルを小さく」する度合いは、当初は統一された規格が無かったために各レコード会社がバラバラの調整を行っていたようなんですが、それでは再生する盤によって設定を変えなければなりません。1954年にアメリカレコード協会(RIAA)が「RIAAカーブ」と呼ばれるカーブに統一したことによって、現在はレコードのカッティングもイコライザアンプも、全てこの「RIAAカーブ」に則った設定になっています。

えーっと、ちょっとややこしい話になってしまいましたが、ここから先はCDと同じです。コントロールアンプ、パワーアンプを経由して、増幅された音がスピーカーから出てきます。

それでは紳士淑女の皆さん、ライオネル・ハンプトンの登場です。♪
彼のビブラフォンが私たちの耳に届くまでには、これだけ沢山のプロセスを通過していたんですね。

……はい、というわけで、ざっくりとピュアオーディオでの再生の仕組みを説明させていただきました。

各機能毎に分けて説明しましたが、実際はパワーアンプにボリューム調整がついているものや、コントロールアンプとパワーアンプが一緒になった「プリメインアンプ」や、イコライザアンプ側に昇圧トランスが内蔵されたものなど、単体のアンプと言っても色んなタイプの製品があります。
実際、視聴会で使っている機器でも、WADIA581にはボリュームコントロールが付いていてコントロールアンプなしでも使えるようにできていますし、第一回・二回の視聴会で使用していたATE-2001は、昇圧トランス、イコライザアンプ、コントロールアンプの機能を併せ持っています。

さて、今まで「オーディオの世界はよく分からない」と思っていた方、少しは分かっていただけましたか?
今までよりちょっとは分かったかな〜、という方、涼みがてら、近所の家電量販店のオーディオコーナーを改めて覗いてみてください。
チンプンカンプンだった機器の数々が、何のためのものだか分かるだけで、見え方が変わってくるのではないでしょうか。
また、「高級過ぎて手が出せない」と思っていたものが、案外そうでもない金額でも置いていることに気がつくかも知れません。

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