世界一アットホ―ム?!「“いい音”を聴こう!ピュアオーディオ視聴会・出張編@epok」レポート

2012年4月14日。
前日の夜から続いた雨は朝のうちに止み、暖かい日も射し始めた春の昼下がり。大阪は松屋町にあるイベントスペース・epokにて「“いい音”を聴こう!ピュアオーディオ視聴会・出張編」を開催いたしました。

午前9時。高槻のA&Mオフィスへ向かい、epok運営スタッフであり、今月からepok内で営業開始したCDショップ・ほ〜ぷ軒(営業時間:平日/15:00〜21:00、土日祝/13:00〜21:00、定休日:火曜日&不定休。関西の音楽ファンはみんな遊びに行けばいいと思います。面白い発見がありますよ)店長でもある杉本くん、A&Mの浅井さんと共にオーディオ機器を杉本くんの車に詰め込み、一路松屋町へ。

epokは多目的スペースなので、基本的には何も無い”四角いハコ”です。常備しているのは隅にあるほ〜ぷ軒のCDコーナーと本棚、毛足の長い赤い絨毯とソファ。この日も入った時には既に赤い絨毯が敷かれている状態でした。始めは、そこに椅子を並べる予定にしていたんですが……。

今回は前回の出張視聴会で使用していたオーディオラックを持ち込まず(やたら重くて大きいので)、epokにあるテーブルを借りることにしていたんですが、用意してくれたテーブルは、高さ20〜30cm程度。低っ。

「これにターンテーブル置いたら、地べたに座り込んでレコードかけなきゃいけないな……あれ?持ってきたスピーカースタンドも意外に低い。よし、じゃあいっそのこと椅子は一切使わずに、皆で地べたに座って聴いてもらおう!」

とその場で趣旨を変更。この方向性に決めた時点で、「今日は楽しくなるなぁ」と確信していました。だってみんなで絨毯の上に靴脱いで座るオーディオ試聴会って、他にあんまりないでしょ?

約1時間ほどで浅井さんがセッティングを終えると、ちょうどその頃に自宅から電車で来ていた三浦社長の到着。30分ほどかけて細かなチューニングを行い、ガッツのあるA&Mサウンドの完成です。

ちなみにこの日のオーディオシステムは以下のとおり。

パワーアンプ:ATM-2
コントロールアンプ:ATC-3
イコライザアンプ:ATE-2
アナログプレーヤー:TRANSROTOR Rondino FMD
スピーカー:Kiso Acoustic HB-1
CDプレーヤー:WADIA581

余談ですが、今回使ったパワーアンプのATM-2、運んでみて分かったんですが、見た目に比べて、異様に重い!
数あるA&Mのパワーアンプの中でも、ハイパワーアンプを除けば10キロ前後差をつけての最重量機です。
ATM-2はA&Mが真空管アンプメーカーとしてデビューしたATM-1(今はモデルチェンジしてATM-1Sに)に続いて登場したA&Mにとっての第二作目。
重さについて、「当時我々も気合い入れて作ってたんだろうな(笑)」とは三浦社長の弁ですが、事実、この機種は発売から10年近く経ってから海外オーディオ誌で絶賛されたというエピソードも持つ逸品ですが、重さの秘密は、製品ページにも書かれてある「防衛庁規格に適合する、タムラ製大型トランス」のよう。防衛庁規格?!

午後2時。BGMとして流していたキセル「凪」のCDをゆっくりフェードアウトさせ、お客さんはもちろん、僕も三浦社長も浅井さんも絨毯の上に座って、くつろいだ感じでスタ―ト。

前回はマイクを持ってやや緊張した空気に(主に僕が・笑)なってしまったところもありましたが、この日はマイクが無くても声が通るスペース。
それもあったので、マイクも使わず、高槻での視聴会のようにお客さんと普通に会話できるようなリラックスした雰囲気が作れたらいいな、と思っていたんですが、始めてみると、こちらがオーディオについて説明しているところに質問が飛んで来たり、逆に三浦社長が目の前のお客さんに質問を投げかけたりということも起こり、裸足で絨毯に座ってるアットホ―ム感と相俟って、「友達の家のいいオーディオでレコードをかけてもらってる」という、僕が思い描いていたくつろいだ空間にかなり近づいていたように思います(低いテーブルの下にイコライザアンプと昇圧トランスを潜り込ませてる感じがこれまた家っぽかったんです・笑)。

まずはいつものように大まかなオーディオの説明。今回はA&Mの知性派・浅井さんに難解な部分の解説をサポートしていただきながらの説明だったので、今までよりも分かりやすかったのでは……。
非常に基本的な説明のみだったのでこちらでは割愛しますが、知りたい方には当サイトの過去の解説記事を読んでいただければ。また、Phile-Web内の「林 正儀のオーディオ講座」がとても分かりやすくてオススメです。紙の資料としては「いい音を楽しむオーディオBOOK」が抜群に分かりやすいですよ。

そして前半は三浦社長より、いつものように色々なお話を織り交ぜながら、名録音のレコードを次々とかけていただきました。これまで数え切れないほどの試聴会を行ってきた三浦社長も、こんなスタイルでやったのは初めてだったようです。それでもすんなり受け入れてやっていただけるところが素晴らしいっ。

なんとこの日のこの時間、アメリカでもA&Mの試聴会が行われていたとのことで、期せずして「日米同時開催」というダイナミックな状況に。しかも向こうは立派なホテルで、こちらはユースカルチャー向けのスペースに胡座かいて……という見事に対照的な状態。Skypeでつないだら面白かったかもしれませんね。向こうの人に「さすが日本人、試聴会でも靴脱いで地べたに座るのか」などと誤解されそうですけど(笑)。

後半は勿論、お客さんの持ってきてくれた音源を聴いていただきました。
富樫雅彦ローランド・カークルイ・ヴェガ(いずれも聴かせていただいたのはアナログレコード)……と色々ありましたが、特にルイ・ヴェガでは、フロアユースの音づくりとリスニングユースの音づくりの違いを明確に感じるような音で非常に興味深かったです。持ってきていただいた方としては物足りない音、という印象だったようですが、ダンスフロアのサウンドシステムを想定したミックスなんですよね。PAとピュアオーディオの「高音質」は似て非なるものでしょうから、この辺りのことはまだまだ知るべきことが沢山ありそうです。

そしてこの日はほ〜ぷ軒もあったので、「ショップのおすすめ品」として、うつくしきひかりsim + otomoをかけてもらいました。

そんなこんなで絨毯の上でまったりしながら楽しく聴いていたら、気づけば予定していた2時間をとっくに経過。三浦社長より「ワルツ・フォー・デビィ」のレコードをかけていただいた後、「ひばり・いん・あめりか」より「マイ・ウェイ」で締めくくりました。

イベント終了後、杉本くんが片想い「踊る理由」をかけてくれたんですが、録音云々は別として、何この多幸感。楽しいっ!

さて、高槻の試聴室を飛び出し、若い人たちの集まる場所へオーディオシステムを持ち込んでの出張視聴会としては今回が2回目でしたが、単にオーディオショップのスペースを借りる形式では出来ない、「epokならでは」の、そして当視聴会ならではのイベントになったのではないかと思います。

高岡大祐さんが来てくださっていたり(ソファ席に座り、目を閉じて集中して聴かれている姿と、帰り際に挨拶させていただいた時に「やっぱりね、音楽が好きなんですよ!」と音楽への止め処ない愛情が溢れ出すような笑顔でおっしゃっていたのがとても印象的でした)、旧グと連続で来てくださる方もいらっしゃったりと、今回も嬉しいやら光栄やらで、感激しきりの一日でした。

冬、春と続いた出張視聴会も、特に計画的にやっているわけではなく、次が夏になるのか秋になるのか、そもそも次にあるのかも分かりません。でも、まだまだ聴いて欲しい人が沢山いますし、まだまだオーディオのことを誤解されている人も沢山います。僕では力不足という自覚はありますが、僕の代わりにやってくれる人や、これに似たようなイベントをやっている人も今はまだいません。ですので、条件が揃えばまたいつかどこかでこのような、若い音楽ファンに来てもらえる場所を設けたいと思います。その時は、まだ来てくれたことが無い人にも、ぜに遊びに来てもらいたいと思います。

というわけで、epokに来てくださった皆さん、A&M三浦社長・浅井さん、epok杉本くん、本当にどうもありがとうございました!

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