圧巻のピーターソン、感嘆のgolf、悶絶のONJT……第八回「“いい音”を聴こう!ピュアオーディオ視聴会」レポート

昨年に引き続き、今年もA&M LIMITED視聴室を舞台に、「“いい音”を聴こう!ピュアオーディオ視聴会」を行っていきます。
八回目となる今年一発目は、2月27日に、8月に行った視聴会に倣い、一般の音楽ファンの方に集まっていただきました。

(前列右より)前回の視聴会に見学に来ていただいていた一橋さん。気まぐれフーテナニーというブログ、atosakavという名前でTwitterもされてます。
前回、そして第五回にも見学に来ていただいていた、当視聴会最多参加でもある山口さん。今年一月に演劇と音楽を融合した「音楽と演劇の年賀状展」というイベントを主催された、個人イベンターの中でも僕が最も期待を寄せている一人です。
中本さんはその山口さんのご友人で、前回も見学に来てくださっていました。今回はあまり時間がなく、持ってきていただいた音源をかける間もなく帰られてしまいました。次の機会には、ぜひゆっくりと!
(後列右より)オイシイオンガクというイベントの主催者・小西さんは、第五回で見学に来ていただいた際に、とても熱烈な感想をくださったので、今回是非、とお呼びしました。
高橋さんは、小西さんのご友人でもあり、「ニャンと」という名義で、オイシイオンガクをはじめ色んなイベントで手作りマフィンなどを提供されている方。今回唯一の初参加です。
「天辺から爪先まで」ろびさんは、8月の視聴会で来ていただいた後、僕の地元のイベント「長岡京ソングライン」でお会いした際に「また聴きに行きたいです」とおっしゃってくれたので、有言実行してもらうために(笑)お呼びしました。

それではまず、オーディオシステムの解説から。

パワーアンプ:ATM-2001S
コントロールアンプ:ATE-2001
イコライザアンプ:ATE-2005
CDプレーヤー:WADIA581
ターンテーブル:TRANSROTOR Rondino FMD
スピーカー:TANNOY Monitor Red

今回はTRANSROTOR Rondino FMDが初お目見え。今年始めのCESで発表された新製品で、国内には今のところこの一台しか無い、ということで、今のところ、音どころか、実物を見た人はこの部屋に入ったごくわずかな人たちだけ、という非常にレアな一品。

全て合わせると1,000万かという超豪華セットで、今回もジャンルに拘らず、色んな音源を沢山聴いていただきました。

(使用した音源について、CDは〈C〉、アナログ盤は〈ア〉と表記します)

まずはアナログ盤とCD、同じ音源の聴き比べから始めます。
始めに、高橋さんがお持ち頂いた、スピッツの「ハチミツ」〈ア〉〈C〉より“ロビンソン”と、「名前をつけてやる」〈ア〉〈C〉より“魔女旅に出る”を、アナログ/CD両方聴いていただきました。

高橋さん(以下“高”)「(アナログとCDの音って)こんなに違うもんなんですね。(“魔女旅に出る”の後半の盛り上がるところで)各楽器パートの譜面が見えるような気がするくらい鮮明に聴こえました」

確かにアナログとCDでは音は違うし、CDに比べるとアナログの方が各楽器の配置がより鮮明な、立体感のある音にはなっていましたが……。

三浦社長(以下“三”)「録音良くないね。特にCDは音が歪んでるね、音量に関係なく。いわゆる“デジタル歪み”というのが出てきちゃってる」

そう、いかにも「日本のメジャーレーベルからリリースされた、人気ロックバンドの録音」なんですよね。

三「音楽を聴く対象者が、こういう(視聴室にあるような)低い音から高い音まで出てくるようなスピーカーで聴く、っていうことを対象にしていないレコーディングなんだよね。ヘッドフォンで、低い音も要らない、高い音も要らない、真ん中の音だけ適当に聴こえりゃいい、と。帯域を狭く、でもレベルだけは上げてやる、というようなレコーディングだよね。(アナログとCDは)同じレコーディングエンジニアが録ってるから、傾向は大体一緒なんだけども、歪みのある音と無い音っていうのは、人間の耳は聞き分けてるから、アナログの方がなんとなく心地良く聴こえる。歪みのあるデジタルは、それなりに聴こえる」

この「歪みのあるデジタル」っていうのが正にくせ者で、安物のラジカセでそれなりに聴こえる代わりに、それなりのシステム、それこそ、そこそこ値の張るイヤホンで聴いただけで音の悪さが明確に分かってしまうんですよね。

三「だから、演奏がいいとか悪いとか言う前に、録音の問題だろうな」

ですね……これはもう、作る側が根本から考えを変えていかないと、良い録音にはならないでしょうね。

続いては、トクマルシューゴ「Port Entropy」〈ア〉〈C〉より“RUM HEE”を聴き比べてみました。

期待して聴いてみたんですが……なんだかどの音も抜け切らずに真ん中に溜まってるような、地味な印象。

三「多分(アナログもCDも)音源は同じだと思うんだけど、LPにした時に、LP“らしい”音にイコライジングした音のような気がしたな。原盤のスタンパーをね。だから、本来もっとギラギラと入っていていいような音が取れちゃってるな気がする。ぼーっとしたような感じで聴こえるというか。現代の小さいスピーカーや安価なレコードプレーヤーで鳴らすのには、大体この程度の音にしておけばいいかなぁ、というようなLP、という感じがしたね。これだったら、CDの方がまだ良いんじゃないかな」

確かに。アナログは……コレクション、もしくはDJユース、ですかね。

続いては、一橋さんが持ってきてくださったくるりの「図鑑」〈ア〉〈C〉より“街”を聴き比べ。ご存知、京都が生んだ人気ロックバンドによる初期の名作ですね。

しかし……アナログもCDも期待していたわりには……という感じ。
どちらも音の違いはあんまり無く、上下の音をぎゅっと圧縮して、楽器の音も全部団子状になってスピーカーの間でこぢんまりと鳴っている、というような音。

三浦社長、いかがですか?

三「……んー、ま、ちょっとコメントないね、これは」

ははは(汗)。

三「まあ、詞と、シンガーの個性で売ってるというもんだから、あんまり録音の出来は関係ない、っていうことで売れてたんじゃないの?」

そう思われても仕方ないなぁ、というぐらいに残念な録音でしたね。

ろびさん(以下“ろ”)「そういう(録音など)に拘ってる小さいレーベルとかの(作品の)方が、いい録音のものが多いんですかね」

特にこの視聴会でかけている音源を聴いてると、そう感じますね。

三「多分、詞も良かった、歌も良かった、録音も良かった、というものが(後世まで)残っていくんじゃないかな。今出てるクラシックのCDにしろジャズのCDにしろ、元々LP盤が良い録音で、ところが今は手に入らないし、なんとかその感激をCDで自分で味わいたい……というタイトルが圧倒的に売れてるし、逆に言えばそういうものしか売れない。ただ、ウォークマンで聴いてるようなリスナーを対象に作ってるんだ、ということになると、それは全然違うものになってしまう。そうなると、聴いてる側もヘッドフォンや安価なスピーカーでしか音楽を聴いてないから、音の良し悪しなんてどうでもいいや、ってことになってくる。そんなことだと、“いい音”で音楽を楽しむ、ということ自体が将来無くなってしまうんじゃないかな。元来それは(音楽ファンにとって)心地良いもののはずなのに」

そうなんですよね。最近も音楽配信の売り上げが前年割れなんてニュースがありましたが、その原因は、録音においての粗製濫造によるところも大きいんじゃないかなぁ、という気がしてきます。

三「結局、(今の録音は)いわゆる“デジタルは万能だ”という考えがあって、何でもとりあえず録っておけば後でどんな音にでも出来る、と思ってる。もっと高い音を出したい、と言えばすぐ出せる、削りたい、と言えばすぐ削れる。マイクのセッティングも、何でもいいから置いて録ればいい、と。しかも一本のマイクじゃなくてマルチマイクで録ってるから、“ドラムのシンバルの音が前に出てこないですね”と言えば、シンバルのチャンネルのレベルを上げて“ほら出ただろ”と。つまり、録った後で何でもやれるような録音と、2〜3本のマイクの一発勝負で、これを逃したら次は無いよ、という状況でアナログの時代に録音してたものと比べて、人間の耳にどちらが心地良く聴こえるか、というのはどんな人でも聞き分けられると思う。だから、元々録音の悪いものは、アンプやスピーカーを変えたって絶対良くならない。悪い録音は悪い。逆に良い録音は、どんな装置で聴いても絶対に良い」

そうなんですよね。「“いい音”で聴こうと思うと莫大な投資が必要」と誤解をされていますが、実は“いい音”で聴く最短コースは、“いい録音”を見つけることなんですよね。例えば、この視聴室で“いい録音”のものを聴けば、普段聴いてるときも「本当はこういう音なんだ」と視聴室での音を脳が参照できるようになってくるので、iPhoneのイヤホンをワンランク上げるだけでも、今までよりも遥かに“いい音”を楽しむことが出来るんです。

閑話休題。

そろそろ“いい音”が堪能したい……ということで、当視聴会では第三回以来「好録音アーティスト」としてお馴染みのキセル。その時聴いたアルバムのアナログ盤が昨年末リリースされたので、「凪」〈ア〉〈C〉より“うぶごえ”を聴き比べてみました。

CDもアナログも、広がりのある音で、それぞれの楽器も煌めくような鮮やかな音で響いていて、実に素晴らしい録音。三浦社長も、この日かけた中で一番バランスの取れた良い録音だったと賞賛していました。

山口さん(以下“山”)「アナログの方が、音の輪郭が耳に馴染むような感じがして、僕は好きでしたね」

三「アナログの方が、人の声が自然に響いてたかも知れないね」

なるほどー。いやぁ、いい音でした。アナログ盤は限定生産ということで既に完売していますが、CDも演奏・曲・録音どれを取っても素晴らしいので、まだお聴きになっていない方はぜひ一度。

さて、その「凪」のエンジニアでもあり、前回かけたFLYING RHYTHMSもド迫力の録音だった内田直之。氏の手がけた録音がかなり良いんじゃないか、と思い、続いては星野源「ばかのうた」〈ア〉〈C〉を続いて聴き比べしてみました。曲は、“穴を掘る”。

「凪」ほどの煌めくような感じは控えめでしたが、とても好感触です。

小西さん(以下“小”)「アナログの方が、もったりした感じが無くて、音を追いかけやすいような気がしました」

三「アナログの方が、ずっと音が良い。っていうか、なんで良く聴こえるかと言うと、デジタルの場合、高域はシャンッと出てるんだけど、低域に厚みが無いから抜けが悪く聴こえるけど、アナログの方は中高域の音に厚みがあるから、非常に音のバランスが取れて聴こえるんで、アナログの方がずっと音楽性があるような感じにまとまってると思う」

山口さん(以下“山”)「アナログ、欲しくなりましたね」

三「でもどちらも、僕に言わせたら、アナログの“本当の”録音と比べたら、ワンランク音が悪い」

あら……そうですか(笑)。

ここで、アナログ/CDの聴き比べは終了。皆さんお持ちの音源を、どんどん聴いていきましょう。

“本当のアナログ・レコーディングの音”ということで、一橋さんが持って来られてたマイルス・デヴィスの「Cookin'」〈ア〉より“My Funny Valentine”をプレイしました。かの有名な“マラソン・セッション”で録られたうちの一枚ですね。1956年の録音です。

やはり楽器の生々しさは流石の一言。スピーカーから限界まで力を振り絞って出されるような音には、オーディオのポテンシャルを最大限にまで引き出すような勢いがありました。

一橋さん(以下“一”)「オーディオ屋さんにいるような気分になりました」

三「トランペットでも、これだけの高い音が今のデジタル録音だと出てこない」

ろ「いい録音っていうのは、マイクの録り方の良し悪しっていうのも関係あるんですか?」

三「それもある。これはほとんど右チャンネルと左チャンネルの2マイクで録ってる。今の録音は、ドラムひとつ録るにしてもベースからスネアからシンバルから、いくつも並べてるけど、そんなことはしてない。その代わり、どの場所がいいのか、ということにレコーディングエンジニアはものすごく拘ってる。これはルディ・ヴァン・ゲルダーが録音してるんだけど……ここ(裏ジャケ)にもちゃんと“Recorded By Van Gelder”って書いてあるね。このルディ・ヴァン・ゲルダーって人はすごく有名な人なの。特に東側、ニューヨークでね。だから、ヴィレッジ・ゲイトとかヴィレッジ・ヴァンガードとか、そういうところで録音してた。で、西側に行くとロイ・デュナンとか、対抗するようなレコーディング・エンジニアがいて、両方が競い合ってたような、これはそんな頃のレコードだね」

うーん、名演奏と名録音が共存共栄していた、音楽ファンにとっては実に幸福な時代ですねぇ。

次に、三浦社長の方からのセレクトで、オスカー・ピーターソン・トリオの超有名盤・「We Get Requests」〈ア〉〈C〉より“You Look Good To Me”。この日、最も皆さんからの反響が大きかった一枚です。

まずはCDから聴いていただき、続いてアナログ盤を。

音が流れ始めた時点で、これまで聴いてきたものとの次元の違いを感じます。
……なにこのリアルさ!?
僕もCDは持ってますが、ここまで情報量の詰まった盤だとは気づきませんでした。
この音を聴けば、きっと誰もが「24ビットだのDSDだの言ってるけど、CDも十分すごいやん!」と思うでしょう。
アナログも勿論素晴らしいんですが、CDからこれだけの音が出た、ということが何よりの衝撃でした。

三「アナログの音が良いとかCDの音が良いとか言っても、所詮録音なの。このCD、今まで聴いてきたCDの音と全然違うね。何故かと言うと、“元”が良いから。アナログで録音されてるテープがあって、それをCD化してる。ということは、今のデジタルの録音を否定するわけじゃないんだけど、デジタルだからどんな音でも作れるんだ、というレコーディングエンジニアの“驕り”が、薄っぺらな音にしてしまってるんじゃないかと思うんだよ。
僕らは決して“アナログが良い”なんてことを言い続けるつもりは無いけど、今は残念ながらアナログの音を凌駕できてない。しかもこのレコードの録音、'65年だよ(笑)。考えられない古い録音だよね。それでも、現代の録音よりも良い。これはきっと、レコーディングエンジニアたちの“良いものを残してやろう”という気迫の違いだと思う。
これからはデジタルだから、やっぱりデジタルでいいものを残してもらわないと、中途半端な音楽で満足してしまって、本当の音楽を見失ってしまう、ということを僕らは非常に憂いて、こういうような(視聴会の)イベントをやってるんだけど。
だから皆が“いい音のものを欲しい”ということを叫び続けたら、いつかは(良い録音のものが出てくるように)なってくるでしょう。で、出てきたらみんな分かると思うのね、一聴歴然で。“私たちが待ってたのはこの音なんだ”と。そういうものが出てきてほしいなと思います」

そして、女性ボーカルものだとどんな響き方がするのか、と、サリナ・ジョーンズの「愛のバラード」〈ア〉より“You Light up My Life”、“Bridge over Troubled Water”を続けて聴いていただきました。声のナチュラルさ、歪ませてレベルを上げたのではない、ストレートに伸びていく歌。
僕もこの視聴会で何度も“いい音”を聴いてきましたが、今回は前半に今イチな録音を聴いたせいか、今までより少し“いい音”の意味が分かってきたような気がします。

さて、ここで山口さんはそろそ帰りの時間が近づいてきてしまったということで、山口さんが持ってきてくださった音源を聴いていただくことにしました。

一枚目は、タラフ・ドゥ・ハイドゥークス「仮面舞踏会」〈C〉より“オスティナートとルーマニア舞曲”。
録音は再高品質ではなかったですが、演奏の素晴らしさ、楽しさには三浦社長も興味津々でした。ライブはもう、本当にすごいんですよねぇ。

三「サリナ・ジョーンズを聴いた後だと特に音が薄く感じる。これだけの演奏してるんだから、もうちょっとステージ感が出てきても……というか、出てほしいな」

山「でも、自宅で聴いてるよりは、すごく奥行き感もあって、良かったですね」

そして二枚目はグレンスミス「Roman Album」〈C〉より“泣き虫モンスター”。

山「一音一音が際立って聴こえるというより、音の重なりが綺麗に聴こえる、という感じがしますね。でも、自宅で聴くのとすごく変わったかっていうとそうでもなくて。普段はいい環境で聴いてるわけではないんですけど、それが酷い音というわけでもないし」

三「バランスの取れた良いレコーディングだと思うよ」

良い録音のものは、それほど環境に左右されないことも多いんですよね。だからミュージシャンやプロデューサー、エンジニアの皆さん、拘りぬいていい録音した方が良いですよ!

さて、続いてはろびさんの持ってきてくださった音源を聴いてみましょう。ろびさんは3月に「天辺から爪先まで」でシャムキャッツを大阪に招聘しますが、そのシャムキャッツの新作「渚」〈C〉より表題曲を、他よりも一足早く視聴室で聴くことが出来ました。

後日談になりますが、ギターの菅原さんによると、テープMTRで録音されたということ。言われてみれば、確かにややローファイなサウンドに聴こえました。ピュアオーディオでガツンと鳴る、という感じではなかったですね。

ろ「以前にデモで出してた曲なんですけど、だいぶ奥行きが感じられるようになってるかなぁ、とは思いました」

circeの新譜も持ってきていただいてたんですが、CD-Rだったため再生できませんでした。残念……。

続けてろびさんのセレクト、「GO-GO KING RECORDERS ORIGINAL RECORDINGS vol.1」〈C〉よりBLACK BOTTOM BRASS BANDの“Strawberry Dance Hour~In The Mood”

曲ごとに録音の仕方が違う、レコーディングスタジオを主軸にしたコンピレーションですが、この演奏は、最小限のマイクでブラス全体を一発録りしたような、かなり薄味の音でした。

ろ「大きいスピーカーで聴いてるからかな、クッキリと聴こえますね。全体的にバシッと聴こえる感じは普段聴いてるのとは全然違うな、と思いました」

続いての小西さんのセレクトは、高木正勝の「タイ・レイ・タイ・リオ」〈C〉より表題曲。このアルバムは、小西さんが見学に来てくださった時に村田さんのセレクトで聴いてたんですが、なんとそれを完全に忘れてたという(笑)。

小「普段はiPodとか、気軽に音が聴ける手段を選んでしまってるんですけど、こういうオーディオで聴くと、かなりダイナミックな感じで聴こえました。(音が)内蔵に来る感じが、すごく楽しめました」

続いてはgolfの「Plastic Love e.p.」〈C〉より表題曲。

このバンドは小西さんが昨年「オイシイオンガク」で招聘されていました。僕も観に行ったんですが、このCDは、聴いているとその日のステージの様子やVJの流していた映像、メンバーの仕草まで思い出してくるような、リアルかつ、クリアで厚みのある、気持ちのいい録音。こういう音、大好きです。

高「これ(ピュアオーディオ)で聴いた価値があるっていうか、楽しみが引き出せたっていうのは、今日の中で一番思いました。音に上や下もあるような立体的な感じがして」

三「これ、録音良いと思うよ。シンセの高い音でも歪んでないし。なかなか良いんじゃないかな。やっぱり良い録音だとね、人間の耳は左右にしかついてないんだけど、左右以外に上下も奥行きも感じるから」

いやー本当に素晴らしかったです。

続いて高橋さんのお手持ちの音源から、馬の骨の「馬の骨」〈C〉より“燃え殻”。高橋さんがとても大好きな曲ということでしたが……。

高「はぁ〜……満足しました(笑)」

はい、それは何よりです(笑)。

次に、一橋さんが「これだけは!」と出した一枚は、TEASIの「壁新聞」〈C〉。曲は“いきててよかった”。
下手な手を加えていない純粋な音が、無理無く伸びやかに広がっていくような録音でした。

一「(好き過ぎて)冷静に聴けないっていうか(笑)。でも、すごく良かったです。家でも、結構良い感じで鳴ってるんですけど」

これまた、「良い録音は環境を選ばない」の好例ですね。

三「録音良いよ、うん。非常に(音に)高さが出てきてるね」

色々悩んだ末(「うたうううあ」もありましたが、CCCDだったので断念)にろびさんが選んだのは、ザ・フレーミング・リップスの「Soft Bulletin」〈C〉より“Race For The Prize”。

ろ「リップスはミュージシャンに好きな人が多くて、この曲なんかもすごく人気がある曲で、それがこういう環境で聴くとどういう風に聴こえるのかなぁ、って。曲は良いけど、録音も良いんかな、っていうのが気になったんですね」

実際聴いてみて、いかがでした?

ろ「まあ、いつも聴いてる環境が環境なので(笑)、聴こえ方がだいぶ違いましたし、ミュージシャンが好き、っていう理由も、ただメロディだけじゃないんだろうなぁ、という気がします」

三「録音したスタジオの問題かも知れないけど、僕はマイクロフォンが気なった。特に高域のマイクロフォンが、もうちょっと何とかしたら……録音技術じゃないと思う。そのスタジオに置いてあるマイクの影響なのかな。もっといい具合に聴こえても良いんじゃないかな」

小西さんが「家にレコードプレーヤーが無いので聴いたことがない」と出してくれたのは、THE MICETEETH「いくつかの春の光」〈ア〉より“春の光 Single Version”。

そういえば今までスカやレゲエってあんまり視聴会でかけたことが無かったですが、ピュアオーディオに馴染む、まろやかな響きでしたね。

小「サックスのソロがめちゃくちゃ気持ち良かったです(笑)」

三「これは、ちょっと小型のスピーカーを意識して、低音を持ち上げて、高域も上げたようなレコーディングだね。だけど、中域は非常に綺麗に出てる」

ろ「録音はほんまに、お金じゃないんですよね。“録り方”なんですよね」

三「うん、そう」

続いて一橋さん、視聴室に来るまでの移動中に聴いていたらしく、ポータブルCDプレーヤーから取り出したのは、yumbo「これが現実だ」〈C〉。一曲目の“みだれた絵”を聴いていただきました。
TEASIに引き続き、こちらも素晴らしい。

ろ「私、一瞬拍手しそうになった(笑)」

ええ、それぐらい臨場感ありましたね。

三「録音良いよこれ」

こういうオーディオシステムで聴いくことで、その魅力が最大限に発揮される、というようなダイナミックな録音でした。

次にろびさんは“リベンジで”ということで(笑)、再び「GO-GO KING RECORDERS ORIGINAL RECORDINGS vol.1」より堂島孝平×GO-GO KING RECORDESの“Pretty Little Dino”。
ド頭でフリーキーなギターソロが始まってうろたえましたが(笑)、録音自体は力強くて良い感じでした。

ろ「これ、アナログ切ったら面白いかも知れないですね」

あー、確かに。アナログで聴いてみたくなる音でしたね。

ろ「作る側の意図っていうのがあるんやな、っていうのは、いつも(視聴会で)聴かせてもらうと思うんですよ」

そうですね。それを意識せずに音楽を聴いていると、そういう“意図”が、目の前で聴こえる音の奥に埋もれたり、音の端々からこぼれ落ちてしまうんですよね。それを受け止める、という意味でも、ピュアオーディオのシステムで音の隅々までじっくり聴く、ということは、いいトレーニングにもなるんじゃないかと思います。

……というわけで、約4時間に渡って行われた今回の視聴会は、竹村延和「ソングブック」〈C〉より“Swimmy”を聴いていただいて終了。

いやー、楽しかったですが、さすがに集中して聴いてると疲れました(笑)。三浦社長もご参加いただいた皆さんもお疲れさまでした!

最後に、高橋さんが「友人に貸したりしてるうちに傷だらけになった」というスピッツのアルバムを三浦社長に磨いてもらって傷を取っていただいている隙に、一橋さんが滑り込みで一曲だけリクエスト。
大友良英・ニュー・ジャズ・トリオ+「Lonely Woman」より1曲目のクインテットの演奏。
以前かけた「大友良英サウンドトラック Vol.0」も鳥肌の立つような音でしたが、こちらも目の前にバンドアンサンブルが現れたかのような生々しさ。演奏も熱い……!

今回は、前回の視聴会から時間が空いていたこともあってか、僕も改めて“いい音”とは何か、ということを深く考えさせられました。
古いもの、新しいもの、メジャーなもの、マイナーなもの、お金のかかっているもの、かかっていないもの。
そして、アナログとデジタル。

この日に聴いた音、三浦社長の話などを少し自分の中で整理してみたいと思います。

とりあえず、第八回はこれにてお開き。最後まで読んでいただいた皆さん、ありがとうございました。次回もよろしくお願いします!

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